結花さんVS鬼塚さん
持春さんの、低木(ひくき)さんとは反対側の隣にはふたつベッドがある。
持春(もちはる)さんのすぐとなりのベッドには、ここでもトップクラスに元気の良い、結花(ゆか)さん。
歩いたり、立ち上がったりは出来ないものの、はきはきとして芯のある声で喋るし、自分で食事をとれるし、ベッド上で体位移動もできるから、オムツ交換の時間には大変助かっている。
そのまたとなり、窓に面しているベッドには鬼塚(おにづか)さんがいる。結花さんほどではないが、元気で、でもすっごく気分屋な性格のお婆ちゃん(機嫌を損なうとかなりやっかい者になってしまう)。
結花さんは少し意地悪な性格で、鬼塚さんとは犬猿の仲なのだ。。。
午後12時/昼食の時間
持春さんの為に"徹子の部屋"をつけ、鬼塚さんの食事介助に入る。
僕「鬼塚さん、お昼御飯を食べますよ!」
鬼塚さん「はい、お願いします。」
スプーンでご飯を口に持っていくやいなや、結花さんがカッと、獲物を見つけたネコのように目を見開いてこちらを見てくる。
結花さん「ははは、赤ちゃんみたい!赤ちゃんだ!赤ちゃん!」
やめてくれ。
鬼塚さん「。。。」もぐもぐもぐ
結花さん「自分でなにもしないから!赤ちゃんだよ!」
僕「あのー、結花さん?せっかくのおいしいお食事、冷めちゃいますよ?」
結花さん「うん!わかった。」
この時点で鬼塚さんの食事速度は半減しており、かなりご立腹な様子。
鬼塚さん「あのね、世の中にはね、うるさいやつがいっぱいいるんだよ。自分が偉いと思ってるんだよね。あれは。」
いや、反撃せずに食べてくれよ。
結花さん「だって赤ちゃんだもん!自分で食べないから!」
やめろおおおおおおおおおお
ここらでもう、鬼塚さんの機嫌はがた落ち。
食事が進まないどころか、気がすむまで結花さんと戦い続けている。
処方された薬も、駄々をこねてなかなか飲んでくれない。
僕「鬼塚さん!お薬飲みましょう!お身体よくしないといけないでしょ!」
鬼塚さん「いやあ、それはね、私はいらないの。私はみんなとは違うからね。」
うん、みんなは素直に飲んでくれるしね。
そんなこんなで、鬼塚さんはいつも、昼食を一番遅く食べ終えることでヘルパーを困らせているのであった。。。